
アクティブホワイトスペース
Setのアートディレクターのタルマです。
我々デザイナーという職業は、デザインを行う中でももっとも気を遣うべき対象として「文字」というものがあります。なぜなら、ほとんどのデザインが「情報を伝えるもの」であるからです。文章が読みやすいのか、読みづらいのか。この情報を強調するのか、目立たせないのか。何か特定の情報を覚えてもらいたいのか。美しいイメージを持たせたいのか、親しみやすいイメージを持たせたいのか。さまざまな目的を持って「文字」を扱います。
その目的を操作するために、「書体」を利用したり「レイアウト」を利用したり「色」を利用したり「余白」を利用したりします。
「書体」や「色」あたりは、どのようにすれば目立つとか、感覚的に誰でもわかりやすいところではありますが、「レイアウト」「余白」はなかなか難しい。
そのためにどんな工夫をしたりするのかを、基本っぽいところから、最近知った情報なんかも書いてみようかなと思います。
ゲシュタルト
余白とレイアウトだけで、情報ってどのようにわかりやすくなるのか。
基本的なことだとこのようなものがあります。
上の図はわかりやすいので名刺にしてみましたが、関連性のある情報をある程度グループ化して、目的の情報を見やすく、理解しやすくするそうさです。
さすがにこれはわかりやすいですが、もっと情報がたくさん入った冊子や、Webサイトのデザインをしていくときなんかは、レイアウトというものは基本的にこれの集合体です。いろんなグルーピングを行って、その場所にどんな情報があるのかをなんとなくわかるように作っていきます。
人間が目で見たときに、なんとなく塊として認識してしまうまとまりを「ゲシュタルト」と呼んだりします。
行間の余白
文章の間にどの程度の余白が設けられているかによって、その文章の読みやすさというのは大きく異なります。
行間というものは、狭すぎても読みにくいし、広すぎても読みにくい。その文字が日本語か、アルファベットか、でも大きく読みやすさは違う。けっこうデリケートなものです。
デザイナーではない方の資料なんかを見ていると、やっぱりこのような要因で読みにくくなっていることはとても多いです。というよりも、パワーポイントやワードって、そんなに細かく調整ができなくて汚くなりがちだったりもします。
字詰め
字詰めに至っては、それを知らない人からするとさっぱりわからないかもしれないところです。パソコンで打つ文字というのは、長い文章みたいなものはある程度きれいに組んでくれたりはするのですが、実は文字によってその間隔がバラバラだったりします。それはそもそも、文章を組むために作られたものだからです。文字を大きく表示した際なんかはさらにそれが目立って見えてきます。
上の図のように、側面に広い空間を持つ文字と隣あったときに、文字の間が空きすぎて途切れているように見えてしまうのです。
この空間を修正していくわけですが、もっとややこしいことに、この作業に明確なルールはないのです。だから今日のパソコンは綺麗に組んでくれないのです。隣会う文字のパターンは無数にありますが、その組み合わせによって調整すべき間隔も異なります。そして、それは感覚に委ねるしかないということです。。
難しい。。
余白とコントラスト
文字というものは、大きければ目立つということは必ずしもなくて、いかに「その周りが目立っていないか」ということが大事です。
目立たせたいものがあるなら、それを引き立てるようにレイアウトを作ります。
余白というのは、シンプルに表現するとかそんな意味よりも、本当に見せたい情報に視線を誘導し、引き立てる効果があります。
情報はたくさん入っていても、さっきの行間が詰まったレイアウトのように、視線が一点に集中しづらくなります。目的に応じて余白を利用して、視線を適切に誘導することはデザイナーの基本だと思います。
最近知った、「へ〜」っていう情報
最近Webサイトで文章を読んだり、タブレットで本を読んだりするという人は非常に多いと思いますが、この文章を読んだときに「紙の本」と「液晶に映った本」どちらが記憶に定着しているのか?ということを調べた研究がありました。
結果は、より多くの情報を記憶に残したのは「紙の本」でした。さらに、面白い情報があって、文章のなかにWikipediaのようにリンクがついていたらどうなるか?
その結果は、記憶の定着率がさらに低下したのです。
なぜそのようなことになるのか、というと、スマートフォンや、タブレットというものがパーソナルなツールであるだけに、普段からいろんな通知がきたり、楽しい自分だけの情報を見たりするものであることから、今やっている行動以外の「期待感」が強く影響するからだそうです。
文章中にリンクが貼ってあって、それを押さずに読んだとしても、それを「押してみようかな」と思う思考がその時の思考の3割程度を占めてしまうのだそうです。
今、リモートでいろんな情報を処理している世の中ですが、同じように連絡を取り合えていると思っていても、伝わる精度は格段に低くなっているのかなと思ったりしました。
しかしその分、悪い情報も伝わりにくかったりもすると思うので、良かったり悪かったりなのでしょうけど。
Set 取締役 / OrderDesignStudio 代表取締役
広島県福山市出身。東京都在住。フリーランスのデザイナーから最近法人化、変わらずデザインをやってて、このブログを運営しているメンバーと一緒に働いています。